Seichijunrei-Butaitanbou Community Offline Meetings 聖地巡礼 舞台探訪 コミュニティ オフ会

今回の話をどこから始めるべきか決めるのはなかなか難しい。表面的にシンプルに言ってしまえば、東京と京都で開かれた2つのオフ会の話になる。一人を除いてほぼ全員が初めてお会いする方々だった。これ自体はさほど珍しいことではないのだが、今回のオフ会が特別であったのは、この2年間(そのルーツは更に過去に遡る)追い続けてきた長い道のりの転換点となったことである。

2012年の夏、私がアニメのアーバニズム(urbanism)について初めて記し始めたとき、実在の舞台がアニメ背景のモデルとして描かれていることを知った。当時は実在の舞台がどれだけ頻繁に背景として使われているのかも、また、劇中でどれだけ詳細に描き込まれているのかも知らなかった。TV番組や映画の聖地巡礼(pop culture tourism)については気付いていたものの、漫画やアニメにもそれと同じような熱狂的なファングループがあるとは想像していなかった。舞台探訪者の活動-それはまるで本当の仕事のような活動-を観察する中で、アーバニスト(urbanist)の現地調査の手法に多くの類似点がこれほどあるとは考えてもいなかった。舞台探訪者とコミュニケーションを取りたいがために、全く日本語が話せなかったのに、辿々しいながらも理解してもらえる程度にまで日本語を習得することになるとは全く予想していなかった。日本の舞台探訪者が、外国人が舞台探訪者の活動を観察していることや舞台探訪のモチベーションを理解しようとしていることに、これほどにまで関心を持っていることも考えていなかった。そして、同じテーブルで情報交換し、ビールを片手に、仲間同士で快適にそして気楽に、舞台探訪のスペシャリストたちと冗談交じりに語らう日が来るとは想像すらしていなかった。だがしかし、私はいまここにいる。

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最初のオフ会は、東京に到着した翌日の午後に開催された。私は少し緊張していたが落ち着いた感じで始まった。このオフ会でお会いした3人の友人は以前からTwitterでかなり交流していた人々だった。そのうちの一人とは北京で数日間一緒に滞在したこともあった。オフ会は京アニの「境界の彼方」の新堂写真館のモデルとなった、世田谷の邪宗門で開催された。

グルミットさん(@gromit1446)は京アニ作品のファンでしばしば軽い聖地巡礼を楽しんでおり、とりわけこの邪宗門の常連として馴染んでいる。邪宗門は「境界の彼方」に登場したことに加えて、非常に居心地の良いユニークな空間が保たれている。このカフェはちょうど80歳になったばかりのチャーミングな店主によって経営されている。邪宗門はグルミットさんのお気に入りの場所でマイカップ(詳しくは後述する)も置いている。グルミットさんが邪宗門に最初に到着した。彼は謙遜していたが英語が話せたので他の人々を待っている間、mixed language(訳者注:おそらく日本語と英語のミックス)で話していた。

シャオさん(@xiao3_gu3)はアニメファンで聖地巡礼の知識もあるが、多趣味で多才能な人でもある。彼は日本語に加えて英語と中国語を話すことが出来、この3つの文化を理解しその架け橋となるべく活動している。彼は何度も中国を訪れていて、前回の訪問時には一緒に滞在した。彼は今日は我々の通訳で、私がどのような活動をしているのか英語で説明した内容を他の人々に翻訳してくれた。我々は皆彼に感謝したが、彼にとって重荷でもあったので次回会う時には夕食を奢ろうと思っている。

こばやさん(@ts_kobaya)が最後に到着した。彼は素知らぬふりをしていたが実は有名人だ。コアな舞台探訪者の中でも、彼は動画を使用するただ一人の探訪者だ。文章が多いブログ記事と比較して、動画は言葉の壁を越えてより簡単にシェアできるものなので、彼の舞台探訪動画はしばしば日本のポップカルチャーを紹介する英語メディアにも取り上げられている。彼は多くの舞台探訪動画がCrunchyrollのニュース記事に取り上げられていることを信じられないような表情で座っていた。ちなみにCrunchyrollは日本国外で合法的にアニメを試聴することが出来るストリーミングサービスとして広く使われている。こばやさんの動画は私がこの世界へ入るに当たり文字通り最初に触れたものだ。彼はまた私が最初にコミュニケーションを取り始めた人々の中の一人でもあったので、このオフ会は心から喜ばしいものとなった。

このようなオフ会は我々全員にとって初めての経験で皆興奮気味であったため、しばらく話した後になってまだ何も注文していないことを思い出した。そしてようやくテーブルに紅茶が運ばれる段になって、私は店主がグルミットさんのためだけの特別な棚から他のものとは異なるカップを取り出したことに気付いた。砂漠の景色を描いた明るい青地のカップは、京アニの「たまこまーけっと」のカフェ「星とピエロ」に登場したものだ。グルミットさんはこのカップを特定した後実際に購入し、「たまこまーけっと」の舞台モデルとなった京都の桝形商店街に寄贈した。彼はこのカップを邪宗門にも寄贈し、いまそれは「グルミットさんのカップ(Gromit’s cup)」となっている。

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私の娘は2014年夏アニメの「ハナヤマタ」が好きで、この作品は神奈川県の鎌倉が舞台でしばしば江ノ島電鉄が登場する。江ノ電は本作のコラボ商品として鎌倉でのみ購入可能なプロモーション用のグッズを製作した。私が10月に行くまでには売り切れてしまうと思っていたが、グルミットさんは私のために一つ購入して邪宗門で会うまで保管していてくれた。

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グルミットさんは京アニ作品の「天城ブリリアントパーク」第2話の聖地巡礼写真を見せてくれた。我々の会話の中心はこれに移った。我々は、日本のpop culture tourismの観察を通じて私が最も集中的に情報を集めていた事柄を確認した。つまり、聖地巡礼(holyland pilgrimage)はカジュアルなものでただ単に舞台に行くことだけが求められるものであるのに対して、舞台探訪(scene hunting)は個々のカットの場所を探し出し、可能な限りアニメと同じアングルで精密に写真を撮影し、キャプチャ画像と写真を並べて投稿し(通常はその舞台の雰囲気を伝えるコメントを付記し)ブログ記事を製作するものであるということだ。(形式的な面で言えば、キャプチャ画像との比較やコメントが編集の一部となっているものの、こばやさんは注目すべき例外だろう)。

その場所の雰囲気や特筆すべき点を書くことは、舞台探訪者が実践していることと都市開発とその場所の特徴に関する私自身の努力を結びつけることに繋がる。舞台探訪者は自分自身の活動を通じて環境や都市設計への感性を異様なまでに鋭く発達させている。スペシャリストとしての、或いは、学術的な鋭い洞察力は持ち合わせていない場合でも、彼らは熱狂的に最速探訪への競争を繰り広げている。都市計画の専門用語を欠いていることは、ある意味で一般的な読み手に対してより確実性を感じさせて近づきやすいものとなっている。

私は日本の都市設計や街頭文化(street culture)を調べて記録することに関心があることを説明した。これによって他国の都市計画者へそのコンセプトや成果を翻訳することが出来るようになるからだ。特に、私は商店街(shotengai)を説明することに多くの時間を使った。商店街はしばしば公的空間の中心的な存在となるショッピングアーケードだ。「たまこまーけっと」が商店街で育った少女とその商店街の居住者の交流の物語であることは素敵な偶然の出会いであった。しかし、特別な舞台モデルとpop culture tourismを深く考察したことはBTCへ私の存在を知らせることになった。

我々は非公式の研究目的のためにアニメのキャプチャ画像を使用することの法的側面について議論した。多くの日本の舞台探訪者はキャプチャ画像の使用は研究目的のためだけに使用すること、そして著作権はそれぞれの著作権者が保有していることをブログで明記している。私はそのようなコメントをブログ記事に記載していないが、fair useの規定にさえ従っていれば十分と考えている(訳者注:fair useは米国著作権法で認められている考え方だが日本著作権法では認められていない)。私は建造環境(built environments)がどのようにアニメに反映されているか書いており、また、その特別な例示としてキャプチャ画像を使用しているが、必要以上に使用することはないし関係のない画像を使うこともない。ブログで営利活動を行っているわけでもない。だから私の活動は客観的に見て全て誠実(good faith)になされていると確信している。

私は話題を変えて同人誌のキャラクターや設定の著作権についてどのように考えているのかを尋ねた。彼らの理解は、絵が版権画からの文字通りのコピーでない限りは問題ない(above board)というものであった。それはただの模倣だろう。また、発行部数が非常に少ないことに加えて、ほとんどの場合は半年に一度の同人誌即売会やとらのあな等で限定的に販売されるものであるので、大規模な商用販売として誤解されることはないだろうというものであった。私の理解は少し異なる。私が知る限り明確な許諾やライセンスのない使用は著作権侵害になるが、漫画・アニメ業界はこれを黙認している。何故なら、グルミットさんが指摘したように発行部数が少ないからだ。しかし、より重要なことは、同人誌が少なからぬ役割を果たしていることだろう。例えば、その作品シリーズを制作し続けるのか否か制作者が判断するに当たっての材料を提供するといったように。お互いの意見を確かめ合った後、我々は同意していないことに合意し、考えを変えるに足る何らかの情報を得るまでは保留することにした。意見の相違は良いものだ。このことは他人がしばしば自分とは違ったものの見方をすることを教えてくれるものであり、今回のような集まりが重要であることを示している。

我々は最後にレッテルを貼ることについて議論して話を終えた。あるグループや個人をレッテル貼りすることが良いか悪いかは置いておくにせよ、その言葉が一般的にどのような意味を持つのか知ることは重要。オタク(otaku)という言葉が外国語に借用されたときはニュートラルもしくはポジティブな意味合いさえ持つものだが、日本語では未だにネガティブな意味合いを含むものであることを私は知っている。オタクという言葉は強迫性障害や引き篭り(本当にその通りであるかどうかは別として)と未だに関連付けられており、友人との会話や冗談で使われるような場合を除けば耳障りに聞こえうるものだ。彼らは日本語でオタクの代わりにニュートラルな同義語として使われるフリーク(freak)はどうかと尋ねてきた。これは私の意見にすぎないのだが、英語の話者にとってはフリークはオタクとほとんど同じように扱われるものであることを伝えた。意味合いが強すぎるので親しい間柄でない限りは使わない言葉だ。我々は全員ファン(fan)の意味合いを理解していることについて同意した。つまり、ファンは英語でも日本語に借用された場合でも本質的に同じでニュートラルな意味合いを持つということを。使うのであればファンが良いだろう。

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1週間があっという間に過ぎて、私は京都へ向かうため新幹線に乗車していた。通訳なしでコミュニケーションできるか心配だったので、私はPowerpointで資料を作り始めた。辞書でチェックし、考えながら日本語で主なポイントを纏めるためだ。隣に座っていた男性が私のことをちらりと見て興味を持ったようだった。彼は自己紹介し、メディアとジャーナリズムを研究する立教大学の教授で吉田則昭と名乗った。彼のフォーカスする分野はメディアに関することだけでなく、かつて少年ジャンプの制作に関わったこともあるという経歴の持ち主だった。ちなみに、少年ジャンプは日本の週刊漫画雑誌の中で最も販売部数が多く販売年数も長い。まったく、この座席を指定した発券機は私にlucky dayをもたらしてくれた。京都への2時間の移動の間、静寂の変わりに我々はお互いずっと話し続けた。名古屋を通過するまでの間、彼は私のプレゼン資料の翻訳を手助けしてくれた。

京都に到着して落ち着いた後、私は出町柳から京阪電車に乗り藤森に向かった。京都の舞台探訪者たちが「big night」を計画していた。東京のオフ会と同様に、私は当初は親しい関係にある2,3人とだけ会うつもりだったが、幹事役は歓迎会を開くべきだと主張していた。

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我々は藤森で集合した。飲み放題のお好み焼き屋があるからだが、もっと重要なことはそのお好み焼き屋が「たまこまーけっと」の聖地の一つだからだ。実際、川に掛かる橋や高架が第一話に登場している。

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お好み焼き屋で同席したのは以下の方々だ。

幹事のエンドスさん(@los_endos_)。私の旅程を確認した後、すぐにオフ会をセッティングしてくれた。皆さんと一緒に楽しい時間を過ごせたのはエンドスさんのおかげである。私はエンドスさんの「たまこまーけっと」の舞台探訪ブログを知っていた。カット撮影をするだけでなく、舞台の奥深くまでのめり込んで探訪中に発見したことを考察するのが彼のスタイルだ。商店街や店主やその場の雰囲気を描き出す彼の描写は読んでいてとても楽しい。彼とのコミュニケーションは出町柳商店街の最初の記事を公開して以来のものだ。

夷さん(@ye_bi_su)。舞台探訪者の主力の一人で同じく「たまこまーけっと」が始まってから知り合った。私は彼をBTCの関西支部長だと誤解していた。何故なら、彼は京都を訪れる他の探訪者を熱心にサポートしたり、私のブロークンな日本語の質問にも答えたりしてくれていたからだ。ちなみにBTCとは舞台探訪者コミュニティの略で、探訪者同士のイベントやコミュニケーションを企画する団体だ。夷さんの「有頂天家族」の探訪記事は誰にも劣らない随一のものだ。

セキさん(@seki_saima)。BTCの関西支部長だ。よろしくお願いします!(Yoroshiku onegaishimasu!) このオフ会以前に交流したことはなかったが、セキさんの京アニ作品に関する一流の探訪記事は以前からよく知っていた。京都滞在中、軽く「けいおん!」探訪したときはセキさんの探訪記事を参考にさせてもらった。

ヤキメシさん(@yakimeshi_1973)。Twitterでお互いフォローしていたが、直接コミュニケーションしたのは今回のオフ会が初めてだと思う。彼は私と様々な面で似ている。アニメ舞台や探訪者そのものに関心を持つが、一方で舞台探訪のコアな記事を発行したりすることはないという意味で。また、アニメ作品の鉄道や、アニメ制作会社と鉄道会社のコラボレーションにもお互い興味を持っている。話す前に考えたり聞いたりする内向的な面でも似ているように思った。

たちきちさん(@tachikichi)。横浜在住だが、たまたま同じタイミングで京都に来ていた。彼とは有頂天家族や他の作品についてTwitterで何度か会話したことがあった。彼の「White Album2」の舞台探訪記事を追い掛けたりもした。「White Album2」の舞台探訪に時間を掛けたり努力したりする人はほとんどいない中の1人だった。今回お会いできたのは幸いだった。

これまで言及したことはなかったが、BTCではほとんどの場合本名とハンドルネームを使い分けている。個人的には名刺(訳者注:仕事上の名刺のことと思われる)や本名を交換できればと思うがネット上での匿名性も価値あるもので尊重すべきものだと思っている。面白かったのは、お互い見知った仲であるにも関わらずハンドルネームに敬称(訳者注:「~さん」のことと思われる)を付けて呼び合っていたことがごく自然であったことだ。アメリカ人は何故SNSでも本名を使うのか質問されて、そのようなことは気にも止めていなかったことに気付いた。おそらくFacebookで本名を使っていることが理由だと思うが他にも何かあるように感じている。

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食事を始めて間もなく、プレゼントを頂いた。写真に写ったものの多くはエンドスさんからのもので、「たまこまーけっと」「たまこラブストーリー」関連のグッズだ。緑の草葉の背景のチラシは映画の販促にも使われたキービジュアルとして知られたものだ。このカットの舞台は私の右手、このお好み焼き屋のすぐ外にある。オフ会の際にはじっくり眺める時間がなかったが、後になってそのことに気付いた。小さな色紙にはキャラデザ&アニメ監督の堀口悠紀子さんのサインが記されている。堀口さんは京アニの所属で「らきすた」「けいおん!」の監督も務めた人だ。

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色紙とポストカードは「たまこラブストーリー」の映画視聴者限定のギフトで、週毎にデザインが変わった。これらは非売品で映画初演の際に配布されたものだ。パンフレットは映画館で映画上映期間中にのみ販売されていたものだ。これらのたくさんの貴重なプレゼントを頂いて申し訳なく思うと同時に、何も持たずに来たことを少し恥ずかしく思った。このブログ記事の投稿がひとまずの返礼となること、そして私がお返しに出来る意味のあることになると望んでやまない。

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夷さんからは「いなり、こんこん、恋いろは」の舞台概要を示した伏見稲荷周辺の地図を頂いた。このようなものを頂いて大変嬉しく思う。通常は舞台モデルを宣伝することで利益を得るローカルな団体によって作られるであろうところ、これはアニメ制作会社自らが作成していること、そして発行者として裏面に掲載されている点で珍しい。

セキさんは謙遜しながら自分で制作した作品を差し出した。しかし、様々な意味でこれは私をまさにここに導いてくれたものと言えるだろう。1つは「境界の彼方」の橿原周辺の聖地巡礼のための舞台と画像を纏めたマップ。もう1つは「中二病でも恋がしたい!」の大津周辺の、そして京都、大阪、更にははるばる鹿児島の舞台写真とコメンタリーを約30ページのボリュームで纏めたもの。デザインは非常に洗練されていてまるでプロの仕事のようだ。しかし、真に驚いたことはこれを纏めるのに数ヶ月もの時間を掛けているということだった。この大作を纏めるには、作品の全エピソードを注意深く観察することに始まり、全てのカットのキャプチャ画像を準備し、舞台の場所を特定して可能な限り事前にマッピングしなければならない。そして探訪の旅程を計画し、予算を確保し、キャプチャ画像を印刷または画像で手持ちし、現場へ飛び、Street Viewerで確認出来ない場所などは地元民の協力も得ながら舞台を探し出していかなければならないのだ。更に、自宅に戻り、何週間も掛けて写真をソートして整理し、見出しや説明を書き、記事に纏めてようやく探訪を完了(complete the journey)することが出来るのだ。これは本当にすばらしいプレゼントだ。そして「境界の彼方」は私が本格的に舞台探訪したと自信を持って言える唯一の作品なのである。

私はプレゼンを始めた。内容は東京で話したことと同じだが、今回は出来る限り日本語で私の口から直接説明した。東京でのオフ会の後の電車の中でのヨシダさんとの会話、そしてこの1週間で東京・京都で出会った人々との会話から、私は自分の日本語に少し自信を持つようになっていた。詰まったときは、エンドスさんかたちきちさんが翻訳してくれた。私はエンドスさんが非常に注意深く私の声を聞いていることに気付いた。リズムが途切れたときは、彼は笑顔で「English! English!」と声を掛けてくれた。

その後、彼らは私の「聖地巡礼」と「舞台探訪」の定義について補足した。「舞台探訪」については東京で聞いた内容と同じだったが、新たな発見もあった。「舞台探訪」は通常は放映後さほど時間が経たないうちの最速特定または最速探訪を意味すると思っていた。エンドスさんは私が考えていた翻訳「scene exploration」よりは「scene hunting」がより適切であると指摘した。つまり「舞台探訪」はまだ知られていないものを探しだすことを示唆している。「舞台探訪者」はいわばパイオニアなのだ。もちろん「舞台探訪者」であっても既に舞台がマッピングされた他人のブログを参考にして探訪することはあるが、そのような場合には「聖地巡礼」の要素が強くなるということだ。

会話のあるところでリジスさん(@lidges)の話題になった。リジスさんは多数の作品について洗練されたブログ記事を書くトップクラスの舞台探訪者の1人として広く知られている。リジスさんは中四国支部長でもある。私はリジスさんとの最初のコンタクト(first contact)について秘密を打ち明けた。私が舞台探訪というものに関心を持って間もない頃、そしてまだBTCのヒエラルキーを知らなかった頃、私はリジスさんが重要な舞台探訪者の1人であるとすぐに気付いた。私は興奮しながら彼に英語で直接コンタクトを試みたが上手くいかなかった。私はリジスさんを責めるつもりは全くない。このときのことで私は2つの教訓を得た。1つは、直接話し掛ける前にまずは話を聞くこと、そしてコミュニティを理解することに時間をかけること。もう1つは、私がコンタクトしたい多くの人々は英語でのコミュニケーションに慣れていないと気付いたこと。これが、私が日本語を学び、使い始めた理由だ。下手な日本語であっても、何らかの形でコミュニケーションすることが出来る。私の日本語は勉強を始めた頃に比べて随分改善されてきたが、これ以上のトラブルは避けたかったので、リジスさんとのやりとりは(訳者注:直接リプを投げるのではなく)リツイートやふぁぼで行うことにした。

私がここまで話したところで、セキさんは携帯電話を取り出し電話をかけ始めた。私は何が起ころうとしているのか瞬間的に察した。セキさんは携帯電話を耳に当て、軽く挨拶をした後、テーブル越しに電話を差し出して笑顔で言った。「さあ、彼と話そう!(Here, talk to him!)」

最初の戸惑いの後、私は永遠とも感じるような(実際には15分もなかったと思う)リジスさんとの会話を始めた。電話越しに外国語で話すのはなかなか難しい。body languageを使ったり表情を伝えることが出来ないからだ。そのような難しさはあったが、私は嬉しかった。何故なら、きっと皆さんも感じているであろう通り、私が恐れていたことは根拠がないと分かったからだ。もし私が香川県へ行ったとき、誰と食事をするかはもう明らかなことだ。

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食事を終えて店の外に出る途中に、「たまこまーけっと」のデラのぬいぐるみがあった。聖地巡礼の噂は京都市内に広く知れ渡っているようだ。

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我々は京阪線に再び向かった。出町柳の桝形商店街で二次会をするためだ。出町柳へ行く前に、夷さんと私は「たまこまーけっと」の商店街の外の主要舞台の一つである北口改札と橋の写真を撮影した。

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出町柳へ向かう途中、私の家族について話した。娘が英語と中国語のバイリンガルであること、少しだが日本語でアニメのテーマソングを歌うことが好きであることなどだ。その一つの例として「アベノ橋魔法商店街」のEDを挙げたとき、夷さんと私は思わず「あなたの心に♪」と同時に口ずさんでいた。車内の人々に見られているとエンドスさんに静止されるまで、数フェーズ続けた。

グルミットさんから娘へのおみやげとして頂いた、ハナヤマタのグッズについても話した。すると夷さんは鞄からおもむろに鳴子を取り出した(鳴子は踊りで用いる小さな木製のclapperでハナヤマタに登場する)。誰だったか正確に覚えていないが、セキさんかたちきちさんは鳴子に対抗してサイリウムを取り出した(訳者注:2人とも取り出しましたw)。サイリウムはアイドルのコンサートで使われる光る棒だ。エンドスさんは恥ずかしいから止めるようにと再び注意した。全くもって、我々は厄介なオタク集団であった。

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数時間経って、桝形商店街は少し怖いくらいに静まり返っていた。

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蛍光灯からのブーンという電磁音すら聞こえず、夜の帳が下りていた。足音、時折遠くを通過する車の音、そして我々の話し声が辺りに反射して響きながら消えていった。

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しかし、夜の商店街に1つだけ灯りが灯っている場所があった。華波である。華波は日中は喫茶店、他の店がほとんど閉まる夜間はバーとして営業している。華波は「たまこまーけっと」に登場した「星とピエロ」のモデルで、たまこたちが悩んだりマスターからアドバイスをもらったりするシーンの背景としてしばしば登場する。実際には、華波は日本全国からやってくる「たまこまーけっと」巡礼者が夜間最後に立ち寄る場所で、京都の常連たちと同じく、放映開始間もない頃からここに何度も集まり続けている。

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立て看板の表側にはカクテル・バーの絵が描かれている。

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しかし、裏側にはメニューの一部と、この店の経営者が何故多くの人々がここに集まるのか知っていることを示す証拠がある。

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さらにいくつかの証拠を。すこし大きすぎて入りきらない。

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店内に入ってドリンクを頼んだ。聖地巡礼を示すものがあらゆるところに見て取れる。たまこのおもちゃ(訳者注:けん玉のことと思われる)もバーに鎮座していた。写真には写っていないがデラのぬいぐるみが入った鳥かごやレコードプレーヤーもあった。グルミットさんの駱駝のカップはバーの裏側にあった。これらは全て巡礼者から寄付されたものだ。

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角にはテスラさんが製作した、たまこと餅蔵が使った糸電話のモデルが置いてあった。実際に電話機能が使えるようになっていて、バーの端から端までの長さがあるケーブルも装備されている。

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もう一つの糸電話(のモデル)とゲーブルがアーケードを跨いで吊るされていた。

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華波には、桝形商店街の巡礼者交流ノートとは別の交流ノートが設置されている。パラパラとノートを眺めていたとき、撮竹館さん(@toritakekan)と背景坊主さん(@high__k)が合流した。2人ともアニメ舞台に深い関心を持っているが、舞台探訪そのものに従事するというよりは、SNSを通じた舞台探訪への貢献を好んでいる。私をここに来る以前から2人を知っていて背景坊主さんとは何度かやりとりしたことがあった。華波でお会いできたことはこの日のもう一つのサプライズであった。

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私はテーブルを回り、一人ひとりに聖地巡礼・舞台探訪に興味を持つきっかけになった作品と、舞台探訪を始めたモチベーションやその熱意が維持されている理由を尋ねた。ほとんどの人が京都在住であることもあって、関西地方が舞台となった作品が多く挙げられた。「涼宮ハルヒの憂鬱」や「有頂天家族」などだが、これらに加えて多くの人が「けいおん!」を挙げた。しかし長野県が舞台の「おねがい☆ツインズ」も一度ならず言及された。京都、和歌山など複数の府県が舞台となった「AIR」も挙がった。「AIR」「涼宮ハルヒの憂鬱」「たまこまーけっと」が全て京アニ作品であることは注目すべきことだろう。京アニはシナリオ製作の一部として舞台をリサーチすることで知られている。京アニが京都周辺の都市や地区を舞台として選んでいることは、そこに住む人々の誇りの一つになっている。

モチベーションや興味の基礎を明らかにしようとするのはより難しかった。このようなことを説明するのが難しい人もいることを私は理解している。その人の行動に大きな影響を与えていたとしても、その理由は普段は考えもしない心の奥深くに潜んでいるものだ。即座の答えを求めることは、本当の理由を覆い隠してしまう一方で、一見矛盾しないように見える表面的な面に焦点を当ててしまう危険性がある。自分の言葉で語ってもらいたかったので私は誘導するような質問をしないように心掛け、いくつかの興味深い回答を得ることが出来た。例えば、ある人は現実世界の舞台がアニメの架空世界の背景として描かれる魅力について語った。このことは、アニメを見て舞台へ行きたくなる場合だけでなく、既に知っている場所が劇中に登場したことを後に知るような場合も含まれるだろう。またある人は、学生時代に過ごした場所がアニメに登場して懐かしさを感じたことについて言及した。アニメのストーリーが最初のきっかけで聖地巡礼は補足的なものであると述べた人もいた。私はこれらの会話から結論を導き出すことは出来ないが良いstarting pointになったと思う。

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飲み続けるにつれ更に酔っ払っていった我々は、最後の方は全くもって厄介なヲタと化した。たまこ役の洲崎綾さんは桝形商店街を何度か訪れていて、いつも記念品を置いていくようだ。

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巡礼ノートの一つには全キャストのサインがあった。

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更に洲崎綾さんのサイン。

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私もノートにコメントを記したが、その日のことを1パラグラフに纏めきることはとても出来なかった。この長いブログ記事もようやく終わりに近づきつつあるが、それでもその日のこと全てを書き記すことが出来たとは思えない。幸いにも、今回のようなオフ会の機会は今後もあるだろうし、日本の探訪者がどのように見ているか理解するチャンスもあるだろう。もうハンドルネームやアイコンではなく、実の名前と顔を知り合った仲なのだから。私はもう日本の探訪者の書き込みをリツイートする外国人ではないのだ。

店を出ようとする段になって、彼らは日本語でちょっとしたひそひそ話をした。その後たちきちさんは私の顔を見ながら、BTCに公式に参加する気はないか、と完璧な英語で尋ねてきた。BTCには特別な会費や入会要件はなく、舞台探訪に関心があれば時々開催されるBTCのイベントにも参加することが出来る。その誘いへの回答は一つしかなかった。

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たちきちさん(@tachikichi)はこの記事を日本語に翻訳しました。

オリジナルの記事はここにあります: http://likeafishinwater.com/2014/11/13/first-offline-meetings-with-the-seichijunrei-butaitanbou-community/